これであなたもSCパダボーン通になれる

SC Paderborn

ついに残り2節となってSCパダボーン(パーダーボルン)07が2位に浮上しました。
パダボーンを見始めて今年で8シーズン目。この人口14万程度の小さな町の小さなクラブに、ブンデスリーガ1部昇格が現実味を帯びてくる日が訪れるとは考えてもみませんでした。
今節2部で2位になったのもクラブ史上初めてのことです。

2年前の2011/12シーズン、現在レッドブル・ザルツブルクで監督を務めているロジェ・シュミットが率いていた時も、最終節まで3位の入替戦に手が届く可能性が残されていましたが、、それでも本当の意味での昇格争いを経験したことはありませんでした。もちろん創設以来、ブンデスリーガ1部に上がったことも一度もありません。

現在の結果をもたらしているのは今季就任したアンドレ・ブライテンライター監督。40歳という年齢は、もし昇格したら史上一番若くして1部昇格を達成した監督ということになります。
ブライテンライターはレギオナルリーガ(4部)TSVハヴェルセというアマチュアのチームで2年間監督を務めた後、パダボーンで初めてプロのチームを指導。
シーズン当初はリーグワーストの失点で、2節では最下位と低迷しましたが、持ち前の攻撃力で徐々に順位を上げ、ウインターブレイク後、アイントラハト・フランクフルトから移籍してきたバカロルツを中盤に据えてヴランチッチと組ませ、4-4-2の布陣を敷くようになってから安定しました。
シーズン前半から破壊力のあった攻撃は、フリーキックの名手メハを中心に32節の段階で今期2部では最多の59得点。

長いシーズンで転機となった試合は12節フォルトゥナ・デュッセルドルフ戦と20節のFCケルン戦。
デュッセルドルフ戦ではザグリクの4得点を含む6-1で圧倒的な攻撃力を見せつけ、得失点差を0まで戻し、その結果11位から一気に6位まで浮上。うまくはまった時の決定力の高さはチームに自信をもたらしました。

さらに20節、シーズン折り返しから2試合連勝して迎えたケルン戦は、ツィークラーを中盤の底に置いた4-1-4-1で首位ケルンに1-0と競り勝ち、3試合連続のクリーンシート。守備面においてもいけると手ごたえを感じた試合でした。

もともと予算の少ないチームなので、他からレンタルしてきた選手をうまく活用することにも長けています。
ブレーメンからレンタル中の21歳のヴルツは、前線からの守備やダイレクトでのパス回しが非常にうまく、ある時期のパダボーンでは重要な役割を担っていましたが、レンタル元復帰のため早い段階で来期の構想から外れることがわかると、ブライテンライターは冬に獲得したコチを粘り強くヴルツと交代しながら併用し、チーム力を下げることなく中心選手の入れ替えに成功しています。
(注:ヴルツは最終的にはブレーメンへの復帰ではなく、フュルトへの移籍が決まっています)

良い時のパダボーンの試合を見ると、びっくりするくらいパスがつながり、見てて小気味良いほどのスピード感とリズムのあるサッカーをします。キーになるのは選手の距離感の良さ。セカンドボールを拾う率も非常に高く、どこに跳ね返ってくるかの予測と、パスが来たときにどこに選手がいるのかという位置関係を、それぞれがしっかりと理解しているのがわかります。

失点は多いものの、ヒューネマイヤーとストローディクを中心にしたDFは固く、GKのルーカス・クルーズは2部でもトップクラスのキーパーの一人です。

ブライテンライターは一時期は好んで4-1-4-1を多用していましたが、カールスルーエ戦で4-0と崩れた後は、前にも述べたバカロルツとヴランチッチの4-4-2、あるいはカチュンガをトップに置いた4-2-3-1にシフト。理想ばかりに固執するのではなく、現実的な視点は失わない柔軟な監督だなという気がしました。

以上、監督を中心に今期のパダボーンをレビューしてみましたが、このチームの要となるスポーツディレクター(Sportlicher Leiter)のミヒャエル・ボルンについても少しだけ触れておきます。
ボルンは2011年にパダボーンのマネージャーに返り咲くと、持ち前の洞察力で優秀な監督を次々にチームに連れてきています。アンドレ・シューベルト(後にザンクト・パウリの監督)、ロジェ・シュミット(現レッドブル・ザルツブルク監督。来期よりレバークーゼン監督)、そして今回のブライテンライター。いずれも若く、監督としての経験はアマチュアクラブのみという原石。
予算の少ないチームを2部に定着させつつ、2年に一度は上位争いにも加わるという離れ業をすでに5シーズン続けています。
ボルンの元、監督が変ってもパスを主体とした攻撃的なサッカーのスタイルは貫いているのが、このチームの本当に素晴らしいところです。

シーズンも残り2試合。最後の最後までパダボーンの試合から目が離せません。

(写真は旧ヘルマン・レンス・シュタディオンの頃。キッカーはパダボーンを好きになるきっかけとなった元ジェフのクルプニコヴィッチ選手です)

パーダーボルン2007