ドイツのスタジアムで決済の共通化は進むか

ブンデスリーガのスタジアムで、いまのようなプリペイドカードが使われるようになったのは、2001年にシャルケが「Knappen Karte」を導入したのが始まりでした。多くのスタジアムが同様のシステムを使用し、アウェイの試合も含めて観戦しようとすると、10種類以上の異なったカードを持たないとスタジアム内でビールを買うこともままならない事態となりました。

キャッシュレスで素晴らしいと、日本でも取り上げられることも多いプリペイドカードシステムは、ドイツのサポの間では不評でした。最初にデポジットした金額が余った場合、払い戻しをすることはできるものの、手間や混雑でそのままにしてしまうケースも多く、たとえば2010年、バイエルンは未返金のカードから2.4Mユーロの利益を得ました。

下記に現時点でのブンデスリーガ1部の各クラブが、スタジアムでどのような支払方法を採用しているかをまとめてみました。Stadionweltが出している2017年時点でのレポートを参考にし、適宜、最新の情報へとアップデートしてあります。(PDF資料:BEZAHLSYSTEME IN STADIEN UND ARENEN

スタジアムカードもクローズド(そのスタジアム内でのみ使用可)とオープンの2種類があります。オープンといっても

デビットカードは基本的にはGirocardというものです。電子マネーはEC Card、クレジットカードはライプツィヒではシュパーカッセ銀行ライプツィヒが発行したもののみを受け付けます。

こうして見ると、現金を除くと、日本(あるいはドイツ以外)からの旅行者にとって一番開かれているスタジアムは、スタジアム特有のカードを廃止し、デビットカード、クレジットカードでの支払いを受け付けているシュトゥットガルトということになります。

ブンデスリーガのスタジアムで、いまのようなプリペイドカード(以下スタジアムカード)が使われるようになったのは、2001年にシャルケが「Knappenkarte」を導入したのが始まりでした。多くのスタジアムが同様のシステムを採用し、アウェイの試合も全て観戦しようとすると、一時は10種類以上の異なったスタジアムカードを持たないと、スタジアム内でビールを買うこともままならない事態となりました。

キャッシュレスで素晴らしいと、日本でも取り上げられることの多いカードシステムですが、ドイツのサポーターの間では評判が良いとは言えません。2016年の調査によると、約66%の人が、スタジアム共通の支払いシステムを望んでいました。最初にチャージした金額が余った場合、払い戻しをすることはできるものの、手間や混雑でそのままにしてしまうケースも多く、たとえば2010年、バイエルンは未返金のスタジアムカードから2.4Mユーロ(約3億円)の利益を得ました。

下記に現時点でのブンデスリーガ1部の各クラブが、スタジアムでどのような決済方法を採用しているかをまとめてみました。Stadionweltが出している2017年時点でのレポートを参考にし、わかる範囲で最新の情報へとアップデートしてあります。(PDF資料:BEZAHLSYSTEME IN STADIEN UND ARENEN

この2年の間に、スタジアムカードには新しい傾向が見られます。スタジアム内でしか使用できないカードから、一般店舗でも使用可能な共通システムへの移行と、それに伴う非接触決済(以下NFC – Near Field Communication)の導入です。

NFC(近距離無線通信)を使用した決済方法は、日本では「おサイフケータイ」などで知られているFeliCa、海外ではType-A/Bという規格が採用されています。安全性が高く、従来の接触型決済のようなPINコードの入力が省略でき、秒単位での決済が可能です。スタジアムの売店のように、一回の決済金額が小さく、スピードが要求されるレジには、最適であるとも言えます。

上記の表で、スタジアムカードにClosed(クローズド)と注記がついているものは、そのスタジアム内でのみ使用可能という意味です。Open(オープン)は、スタジアムに限らず町中でも使うことができます。ここでは、スタジアムカードに、Girogoというプリペイド機能が付帯されているタイプのものを指しています。

ブレーメン、レヴァークーゼン、マインツ、ヴォルフスブルクは、このGirogo付きのスタジアムカードを、2016年より導入しています。2部のクラブではケルン、ザントハウゼン、インゴルシュタットが同様の仕組みに参加しています。

ブレーメンを例にとってみます。ブレーメンは2016/17シーズンにGirogo付のスタジアムカードを発行。ドイツに銀行口座のない日本からの旅行者でも、ブレーメンでこのスタジアムカードを購入すると、Girogoマークのあるドラッグストアやスーパーマーケットなどで、プリペイドカード(電子マネー)として支払可能となります。

ブレーメンはさらに、スタジアムカードにチャージするためのメニューが、公式サイトに用意されています。スタジアムで購入したカード番号を入力して、クレジットカードで支払うと、追加の金額がチャージされるというメニューです。GirogoはドイツのATMで現金をチャージすることもできます。ただ、良いことばかりではありません。Girogo付きのスタジアムカードは、発行時に保証金(デポジット)が必要となります。ブレーメンでは5ユーロ、ザントハウゼンに至っては10ユーロかかります。もちろんカードを返還すると、デポジットは返金されます。それでも、海外からの観戦客にとっては、ドイツ以外で使えないGirogoでは、スタジアムカードがクローズドであってもオープンであっても、お金を取られるという点では大差ないという意見もあります。

他のスタジアムの状況を見てみます。

VfB シュトゥットガルト

シュトゥットガルトは決済に関して独自の道を歩んでいます。2014年という比較的早い時点で、すでにNFC決済も併用していました。マスターカードのPayPassを利用したモバイル決済も可能でした。スタジアムカードと並行して、オープンな支払システムに取り組んでいた唯一のクラブだったのです。しかし2014/15シーズンに、シュトゥットガルトはこのNFC決済システムを廃止。同時にスタジアムカードもやめて、オープンなデビットカード、クレジットカード、現金決済へと移行しました。

シュトゥットガルトのCITおよび決済責任者のベルント・バーガーのインタビューを少し引用してみます。(Bezahlen im Stadion – Das Bargeld kehrt zurück

2014/15シーズンから、スタジアムカードをやめて、現金、デビットカード、クレジットカード決済へと移行します。これは逆行ではなく、将来へ向けてのステップと位置づけています。メルセデス・ベンツ・アレーナを訪れる人が好印象を持ってくれる要素を増やすためです。マスターカードのPaypassテクノロジーは完璧に作動していました。私たちは、非接触型(NFC)およびPINを入力する接触型と、両方の決済システムをスタジアムの全箇所に導入しました。ただ、私たちの顧客にとっては、ふたつのタイプをどのように使用するべきか、判断がつかないという問題がありました。それで、NFCを廃止して接触型決済のみとし、同時に全てのカードを受け入れるという結論に達したのです。

2014年当時、NFC決済はドイツ全体でも0.1%ほどの取引件数しかなく、稼働率の低さと顧客の利便性を考えると、やむを得ない決断だったように思います。2017年の調査で初めて1%を超えたそうですが、今後、シュトゥットガルトが再びNFC決済を導入するかは気になるところです。

TSGホッフェンハイム

ホッフェンハイムは、この9月より新しい決済システムを導入しました。地元のシュパーカッセ銀行の協力を得て、NFCによる決済を開始したのです。これまではクローズドなスタジアムカードでしたが、新しいシステムでは、ドイツ固有のデビットカードである『Girocard』だけではなく、クレジットカード(マスター、VISA)でのNFC決済も可能です。つまり日本からの旅行者でも、コンタクトレス・クレジットカードを携帯しているなら、わざわざスタジアムカードを購入しなくても、ワンタッチで支払いが完了するのです。(従来のPINコードを入力するクレジットカードももちろん使用可能です。また25ユーロ以上の場合は、いずれにしてもPINの入力が必要となります)

FSV マインツ05

マインツもブレーメン、レヴァークーゼン、ヴォルフスブルクと同時期に、Girogo付のスタジアムカードを導入しています。さらに2018/19シーズンからは、TeleCash社の決済システムを導入。『Girocard』、Girogo以外に、クレジットカード(VISA、マスター)での支払が可能になりました。既存のスタジアムカードは、そのまま使い続けることもでき、ゲストブロックでは現金も受け付けます。ファンショップでは、Google Payによるモバイル決済も開始しているそうなので、売店においてもGoogle Payが使用できる日は、それほど遠くない気がします。

 

このGirogoが付いたオープンなスタジアムカードは、今後、他のクラブでも広まっていくでしょうか。

日本からの旅行者の視点から言うと、Girogo付のスタジアムカードよりも、ホッフェンハイム、マインツ、シュトゥットガルトのようなオープンな決済システムが、他のスタジアムにも広まることが一番の理想です。さらには、Apple PayやGoogle Payのようなモバイル決済が導入されれば、換金できずにバイエルンにお金を取られたと、腹立たしく思うこともなくなり、スタジアムでビールを買うことがもっと楽しくなる気がします。

海外からの観戦者も多いクラブは、今後もクローズドのシステムを維持し続けるのでしょうか。冒頭のStadionweltのレポートによると、クローズドなシステムの利点は、クラブが単独あるいは任意のシステムプロバイダーと協力して、独自のシステム開発が可能なこと。また、決済金額のレポートがすぐに入手できることなどをあげています。シャルケが咋シーズンより導入した、袖ユニフォームに埋め込んだICチップで支払いができるシステムも、クローズドな環境なら開発がしやすかったのかもしれません。

ドイツのスタジアム決済はまだまだ変化がありそうなので、今後も定期的にチェックしてみたいと思います。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください