Fan.Tastic Females展『彼女たちの物語』

9月8日から22日まで、ザンクト・パウリ・ミュージアムで開催されていた『Fan.Tastic Females』展。欧州各地の女性サッカーファンを取り上げた初の展覧会でもあり、ザンクト・パウリ・ミュージアムが最初ということで、一部で話題になりました。


展覧会の中心には、21か国80人の女性ファンを映したポートレイトがありました。主催者の一人、ダニエラ・ヴーブスさんのインタビューが、Zeit紙に掲載されていたので訳してみます。ダニエラさんは現在Kickin!という、障害者のサッカー活動への参加を支援する、カウンセリングセンターを運営しています。この仕事の前はザンクト・パウリで、ファンとクラブのコーディネーターをしていました。


Fan.Tastic Females: “In Zeitungen werden nur junge, sexy Frauen abgebildet”(ディー・ツァイト紙 )

なぜ女性サッカーファンの展覧会をしようと考えたのですか?

ちょうどそういう気持ちだったのです。アイデアは2010年に、FSE( Football Supporters Europe)が開催した大会のワークショップで出ました。そこで女性と男性が一緒になって、どうすれば『サッカーにおける女性』というテーマを、批判されることなく取り上げることができるか考えました。男性の世界を非難したかったわけではなく、私達も同じようにファンであるということを示したかったのです。

女性のサッカーファンはなにか別物だとみなされていますか?

はい、多くの女性がゴール裏からのそういう見方には慣れています。彼女たちは自分のチームに対して、他の人たちと同じくらい情熱とパワーを持っています。新聞には若くて可愛くセクシーな女性しか載りません。でももっと多様な女性たちがゴール裏にはいます。

よくある固定観念を打破するような、印象的な女性の例はありますか?

スタジアムでの様々なタイプをうまく表すために、女性ファンを7つのカテゴリーに分けました。太目、やせ型、セクシー、色気なしというものではなく、ファン文化での役割に基づいて定義しています。14歳のウルトラから、94歳の全試合観戦者のスコットランド人まで、全てのタイプがそこにいます。その女性は、昨年サッカーに行くことを完全にやめるまで、国で一番高齢なシーズンチケットホルダーでした。ウルトラスからアウェイバスのツアーまで、女性のファングループやネットワークの手で、ファンの間で知られていることのほぼ全てを揃えました。リーダー的立場の人も紹介しています。ノルウェーのカレン・エスペルンドはサッカー連盟の最初の事務局長であり、後にUEFAで初の女性理事となりました。もちろん女性の選手も紹介しています。

全ヨーロッパ諸国から人物像を描くことができましたか?

私たちはヨーロッパのあらゆる地域を写し取ろうと試みました。例えばポーランドでは、ブラインドサッカーをする9歳の子供の母親にインタビューをしました。彼女は毎週末、ピッチサイドから子供たちを応援する百万人の母親を代表しています。それでも西ヨーロッパ側が多すぎるように感じます。残念ながら、東ヨーロッパはスペインやフランスほどはうまく連絡がつきません。一方で、右派のグループメンバーに宣伝させないようにすることも重要です。この点に関しては、不確実な部分が東ヨーロッパにはあります。

どのようにしてインタビューの相手を探したのですか?

私たちはFSEのメンバーやプロジェクトグループからの提案を元に動いています。例えば、ロシアの3つのビッグクラブである、スパルターク・モスクワ、CSKAモスクワ、ゼニト・サンクトペテルブルクや、チェコ、スロバキア、ポーランドのファンなどです。55のUEFA加盟国から、少なくとも18を取り上げています。多大な支出に対し、たくさんの方々からの自発的な支援がありました。第二弾もすることになると思います。ひそかに計画を練っています。

ビデオポートレイト中心にしたのはなぜですか?

誰もが立ち入ることができる移動展覧会を作りたいという希望を持っていました。ファングループを見せたいと思っても、機器やお金のあるミュージアムでなければ難しい。そこでQRコードの技術を使って、スマートフォンでコードを読み取るという方法を取りました。従来のキャプションを読ませるものもあります。そしてビデオ。入場者はスマートフォンで視聴できます。こういう展覧会のやり方はおそらく新しい形だと思います。

展覧会でなにか使命を追及しているのですか?

一方で私たちの目標は、女性のファン文化の多様性を示し、最終的には女性ファンを前に押し出すことなのです。議論をより活発にして、このテーマへと注目を集めたい。ゴール裏の女性は良いこと?悪いこと?問題がありますか?これは、全てのクラブ、全てのファンの仲間だけでなく、全てのグループが自ら答えをださなければならないでしょう。

あなたは男の領域におけるサッカーがオープンになることを望んでいますか?

展覧会では、自分のクラブや国から誰か出ているのかということについて、特に男性が何度となく話しかけ、尋ねてきました。彼らによると、このプロジェクトは本当に素晴らしいからとのことでした。ファングループの一つが、『なんてことだ、俺たちには女性がほとんどいない』と言った時はとても嬉しかったです。私たちを通じて、彼らが自らこのテーマに取り組まなければならないと気づいたからです。

 

『Fan.Tastic Females』のトレーラー

今後の展覧会の開催予定は、下記公式サイトに掲載されています。ドイツ旅行をする方は時間が合えば、ぜひ行ってみてください。
『Fan.Tastic Females』公式サイト

シャルケのウルトラス・ゲルゼンキルヒェンにも女性はいますし、日本でもゴール裏で、パイフラと呼ばれる大きなフラッグを振っている女性もいます。個人的には普段、女性が、男性がということを、特に分けて考えていないつもりですが、それでも、ドイツで監督や選手がMännerfussball(男のサッカー)という単語を使うと残念な気持ちになります。ダニエラさんの言うように、この展覧会を通じて起こる様々な議論や行動にも注目していきたいと思います。