2019年の数字に希望はあるか

シャルケの年次報告書は2015年度をブログに書いたことがありますが、今回はそれ以降の経緯を見ながら、2019年の年次報告書を簡単にまとめてみたいと思います。

発表された2019年の売上高は275Mユーロ(約330億円 @120円換算)で、クラブの最高財務責任者であるピータースは、クラブ史上2番目に高い数字であると語っています。とはいえ、史上最高だった2018年の350Mユーロ(約420億円)に比べると、75Mユーロ(90億円)落としており、最終的な税引後の当期損失は26M(約31億円)となっています。

売上の明細を見てみます。年次報告書の項目はオリジナルのドイツ語から若干変えてあります。

『試合運営』は入場料収入です。2018、19年ともホーム開催は21試合でした。平均入場者数はリーグのみで比較すると2019年が60,777人、 2018年が61,730人。 2018/19シーズンの後半はチームの成績が低迷したこともあり、6万人を割ることも何度かありました。

『放映権収入』はオリジナルの表記は『メディア使用権』で、 リーグから分配される国内リーグと国際大会の独占放映権料、UEFAからの分配金、DFBポカールの賞金で構成されています。

『移籍金収入』は契約選手の移籍に伴う収益です。Transfermarktから数字を拾うと、エンボロ10M、コノプリャンカ1.5M、ナウド2M、ガイス0.5M。その他レンタルに出した選手たちの2019年分1.5Mを含めると近い数字になります。

『ケータリング』の収益は試合だけではなく、スタジアムのイベント開催からも得られます。昨年フェルティンス・アレーナを訪れた人は、イベントを含めると256万人、総入場者数は2018年より2パーセント増えています。『その他』にはクラブ会員の年会費が含まれます。クラブ会員は年次報告書によると15万7千人以上で、個人年会費は大人50ユーロです。

『放映権収入』についてもう少し詳しく見てみます。リーグとCLに関しては分配される数字が開示されているので、おおよその数字は算出可能です。ただしサッカーシーズンが7月開始、翌年6月終了という期間に対し、年次報告書は1月-12月なので、収益の配分で誤差が生じます。2019年単体を算出するために、シーズンをまたがる収益に関しては、試合数がわかるものは試合数に応じ、それ以外は50%で計算しました。 積み上げ計算と財務諸表の差額はOtherで表示してあります。それぞれのソースについては一番下にリンクしました。

2018/19シーズン、シャルケに対するUEFAからの分配金は64.9Mユーロでした。このシーズンよりUEFAの計算方法が変わり、10年間の欧州での実績に基づくCoefficient ranking(クラブ係数)を考慮するようになっています。TSGホッフェンハイムのように、UEFAの大会での出場実績が少ないと、分配額はかなり低くなります。ただし、継続して出場できるようになれば増えていく性質のものです。昨シーズンのドイツは、ラウンド16で全て敗退してしまったので、シャルケとバイエルン、ドルトムントの差は、クラブ係数以外は比較的小さいものにとどまりました。今シーズンのシャルケはUEFAの大会に届かなかったので、それも2018年に比べると売上を落とした原因の一つとなっています。

経費の方も見てみます。選手の償却費ですが、2019年は約57Mユーロ。このうち、2019年夏に売却したエンボロとコノプリャンカの一括償却費だけで、25M程度を占めています。このまま動きがなければ、2020年度の選手償却費は30M程度となり、2018年並みに戻ると予測しています。ただ、ルディ、ベンタレブなどの去就次第で、一括で処理をする償却費が増える可能性もあります。

バランスシートでいつも気にしているのは、金融機関借入金があとどのくらい残っているかです。2016年にピーターズが、2019年の完済を目指すと発言した通り、2019年7月にスタジアムの借入金は全て払い終わりました。総工費191Mユーロ(230億円)のアレーナは、オープンから18年かかってようやく借金から解放されたのです。

現在の11Mユーロほどの借入金は、Bergerプロジェクト第2期工事のため、2018年に新たに56Mユーロの借入をしたことによるものです。第2期工事の投資総額は70Mユーロ、完成予定は2021年です。ファンやビジターの施設『Tor auf Schalke』の新設と、ファンショップの拡張、レストランやサービスセンターが計画されています。またすでに工事の完了している旧パルク・シュタディオンは、今後ユースのホームグラウンドとしてオープンします。本来なら3月29日にFCゼニトを招待して、オープニングセレモニーをする予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で残念ながら延期されています。

駆け足で主な数字を見てきましたが、今季、リーグ中断前のシャルケの順位は6位と、このままなら来期のヨーロッパリーグに手が届く位置にいます。シャルケはUEFAの大会の常連となり始めた2007/08シーズン以降、2年連続で出場を逃したことはまだありません。1年のブランクであれば、半年分はUEFAからの分配も期待できるのですが、2年連続で逃すとなると、経済的な打撃はかなり大きなものとなります。 ただこの中断期間に、怪我で離脱していた選手たちが復帰できる可能性もあります。なんとしても今シーズンは6位以上を目指したいところです。経済的な基盤がゆるむと、ただでさえ騒々しい環境のクラブは、ますます不安定な状態に追い込まれることになるでしょう。

最後に新型コロナウィルスで中断しているブンデスリーガの現状について。

第25節を前にリーグの試合はストップし、リーグ側とクラブとの2度にわたる会議を経て、現時点では4月30日までの中断が決まっています。5月以降に再開されたとして、観客をスタジアムに入れての試合になるのか、あるいは無観客試合なのかは、今の時点では予測が立てられません。スポーツマーケティング専門家の試算によると、無観客でもリーグを最後まで終わらせた場合、損失額は最大で1億4900万ユーロになるだろうとのことです。

ただ、シーズンをこのまま途中で終了した場合は、損失額の予想が9億1400万ユーロに跳ね上がります。契約に基づく放映権やスタジアム広告の不履行などを含め、1クラブ単位でどの程度の損失になるかちょっと想像がつきません。

シャルケの経営陣、選手、スタッフは6月30日までの自らの給与を一時的にカットし、選手の勝利給も見送ることを発表しました。これにより約600人の雇用が守られることになり、月々で百万単位の流動資金の確保にもつながります。シャルケはゲルゼンキルヒェンでは最大の雇用主として、地域への社会的責任も果たす姿勢を明らかにしています。

 

【参考資料】
シャルケ年次報告書(Finanzberichte
2018/19シーズンのUEFA分配金について(UEFA.com – Media – Documetns
2018/19シーズン・ブンデスリーガ放映権料(Swiss Ramble Tweet
2019/20シーズン・ブンデスリーガ放映権料(The TV money table of the Bundesliga
DFBポカール賞金(Prämien aus dem DFB-Pokal Saison 2019/2020

 

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