U19エルガート監督・必要な時にそこにいること

シャルケU19監督エルガートさんのインタビューがSport1に掲載されていましたので、ご紹介いたします。選手が自宅待機で思うようにいかない時期には、近くにいて彼らの力になることが必要だと語ります。(インタビューアのPatrick Bergerさん、掲載許可ありがとうございました)

So arbeitet Schalke-Guru Elgert

Sport1:エルガートさん、今は誰にとっても不確実な時です。若い人たちと一緒に活動していますが、心理面での需要はどれくらいあるのでしょうか?

エ:選手たちはすでに6週間ほど自宅で過ごし、週ごとに新しい個別のトレーニングプランを手にしています。当然ですが彼らはそこまで強い熱意は持てません。だからこそ今の私たちには大きな責任があります。毎週、選手たちに電話をします。誰もが不安や悩みを抱えています。私たちはいつも彼らのそばにいて、精神的なサポートを与えています。

S:多くの専門家がコロナによって移籍市場が変わると考えています。契約金が下がるかもしれません。ブンデスリーガのクラブにとって、人材育成はさらに重要になるでしょうか?

エ:もちろん金銭的にも大きな変化があると思います。この先も極端な金額がまだ得られるとは思えません。2つ目の質問の答えは『はい』です。しかし意味がないといけません。トップチームをユース出身の選手だらけにすることはできません。トップを助けることができ、積極的な役割を果たす場合に限り引き上げるべきでしょう。

S:ユースの選手に関して特に重視していることは何でしょうか?

エ:私は全体論的なアプローチに従っています。プレッシャーの中でも適切な判断を下せるよう、ボールをコントロールし、試合を理解し、心理面でのスピードを保ち、ピッチ上で継続して自分の位置を確かめなければなりません。そのための練習参加が可能で、負荷もかけられなければなりません。常に怪我をしていたら才能は何をもたらしますか?才能は基本的な要件であり必要ですが、それを生かす能力もないといけません。メンタルの強さは私にとって重要です。つまりいざという時にしっかりしてないといけないということです。

S:選手にブンデスリーガに向けての精神的な準備があることをどうやって判断していますか?

エ:数値で測ることはできません。選手の身になって考える必要があります。フェリックス・マガトがユリアン・ドラクスラーをプロに上げたとき、私は心配していました。彼の才能や態度のことではなく、例えばフェリックス・マガトのグループの中で生き残っていけるような、肉体的な準備ができているだろうかという疑問です。そのあと彼が『監督、大丈夫です。U19の僕たちのグループと同じくらいハードです』と言ったとき、ユレならできると思いました。

S:DFLの決定を受けて、年齢制限がまもなく17歳から16歳へ引き下げられます。これについてはどう思いますか?

エ:結局のところ、16歳でブンデスリーガにデビューする選手は多くはないと思います。基本的にこの試みはオーケーです。選手に準備があって、U19では物足りなく、上を助けてくれるなら反対はしません。大切なのは、選手がプレッシャーと周りの熱狂にうまく前向きに対処できるかです。しかしその際に急いではいけません。選手に必要な基礎があるかどうかが大切です。個性と性格が重要なのです。期待にも応えることができなければならないし、もう一方では、一筋縄ではいかないプロの世界で、地に足のついたところもないといけません。

S:選手の足元を落ち着かせるためにどうしていますか?

エ:私たちコーチや指導者は、こういう点において必要とされます。一対一の話し合いをたくさん行って、技術や戦術やフィジカルの仲介以上に、伝統的な価値観も伝えるべきでしょう。謙虚であることが大切です。それをいつも強調しています。自分の才能と能力は、他の人間より自分を上に置くためのものではないといつも言っています。すぐに数百万のお金を稼ぐからといって、その才能は、例えば職人の才能よりも高く評価するものではないのです。尊敬も私にとっては大切なものです。例えばホテルで従業員に『ありがとう』や『お願いします』を言っていますか?高くを望むべきですが、常に両足を地につけておいてください。例をあげましょうか。

S:ぜひ。

エ:例えば、私たちが選手に対し期待しているのは、トレーニングの後で掃除人が常に清掃に入るロッカールームでも、ある程度はすでに選手によってきれいにされていることです。それは敬意を表すということでもあります。

S:新たな年齢制限ルールの批判者は、選手が早くに燃え尽きてしまうリスクがあると言っています。どう思いますか?

エ:ブンデスリーガの監督は指導者ではありません。常に次の試合に勝たなければなりません。新規則に関しては、私たちが責任をもって対処することが重要です。監督はブレーキをかけすぎてもいけないですが、同時にアクセルを強く踏みすぎてもいけない。U19の選手がブンデスリーガで行けると思ったら、すぐにトップチームの監督に知らせます。シャルケでこれまで約100人の選手がトップへ上がったことを誇りに思います。そして今は、メルジャン、ブジェラブ、クトゥチュ、マッケニーと、ここで育った選手がいます。マリック・ティアウももう少しでそうなるところです。冬のトレーニングキャンプで怪我をしたジャン・ボズドゥアンも忘れてはなりません。ですが私たちはノルマをこなすことばかりを追っているわけではありません。

S:15歳のユスファ・ムココがドイツにおけるユースサッカー全般の尺度とみなされています。彼はすでにU19でプレーし、もうすぐBVBのトップチームとも一緒にトレーニングを行います。彼をどのように評価していますか?

エ:私はその選手を個人的には知りませんし、日常的に練習を見てもいません。ただ自分が驚いたことは認めます。彼はU17からU19へとスムーズに成功を収めています。10月に私たちがドルトムントで4-0と勝利した時、得点はなかったものの、彼は飛びぬけていました。本能的なストライカーで、この年代では信じられないほどゴール前で落ち着いています。スピードがあり、驚くべき得点率です。年齢の割には桁外れに優れています。

S:シャルケのユース部門は長年にわたり、トップタレントを輩出してきたことでも有名です。マティプ、コラシナツ、ケーラー、ザネ、ドラクスラー、エジルのような選手たちと、まだ連絡を取っていますか?

エ:多い時もあれば、そうでもない時もあります。誕生日を祝ったり、ジョエル・マティプがチャンピオンズリーグで優勝した時のように、特別なことを達成した時は電話したりします。セアド・コラシナツが肩を怪我した時もよく連絡をとりました。アタランタ・ベルガモに移籍したレナート・チボラには、コロナで大変な目にあったイタリアの様子を聞いたりしました。私の選手たちが自分を必要にしていると感じる時、そこにいます。それ以外の時は控えめにしています。彼らの成功に乗っかりたくはない。

S:リロイ・ザネはこの夏にどうするべきでしょう?マンチェスター・シティからバイエルンに移籍する可能性もあります。

エ:実は私はリロイやその家族ととても仲が良いのです。もし今まで彼がしなかったことは何かと聞かれたら、こう答えるでしょう。リロイ、選択するときに間違えてはいけないと。そうでなくても、彼はシティとペップ・グアルディオラに大切にされています。もしこの夏にリロイがバイエルンへ行くとしたら、間違ったことはしていないでしょう。私はハンジ・フリックのことを人間的にもプロとしてもとても尊敬しています。若い選手にも力を入れている素晴らしい監督です。いずれにしてもリロイにとってはかなり良い選択肢でしょう。

S:エルガートさん、24年間ユースのサッカーを続けてきて、日々のモチベーションは何でしょうか?

エ:私にとって自分の仕事はとても意味のあるものです。今でも私を動かしているのは、若者が目標や希望や夢を実現するためだけではなく、彼らが人生に価値や意味を見つけることができるよう支援することです。

S:タレントビジネスは本当のところ激化しているのですか?

エ:タレントをめぐる争いは理解していますが、だからといって全てが良いわけではありません。代理人が子供の両親に会いに来てこう言います。あなたの子供をプロにしてあげましょう。私があなたたちにアドバイスしたら、100,000ユーロが手に入りますなどは、もうかなり心配です。早くから大金を手にすると、モチベーションを失うと固く信じています。まだたいしたこともしていない見習いが、あらゆるものを持っているとしたら、その先の成長にとって確かに良いことではありません。

S:選手へのアドバイスは?

エ:私が選手なら常に自分を最も伸ばせる場所へ行きます。一番早く、継続して次へのステップができるところです。最も大金をオファーされた場所ではありません。

S:パルク・シュタディオンの再オープンに伴い、将来的には全てのユースチームがクラブのグラウンドで統一して活動することとなります。敷地内でまとまることはシャルカーのユース活動にとって何を意味しますか?

エ:時機を逸しましたね。クナッペン・シュミーデの価値はいま一度上がるでしょう。時勢に遅れない者が、時代についていきます。私たちには高級品や金の蛇口は必要ありません。最高の人材育成工場とアカデミーは決してぜいたくな設備ではありません。すべてが最高である必要はないのです。何でもすぐに手に入るのなら、なぜ努力する必要がありますか?

S:最近あなたはドイツのユースはもはや世界最高ではないとおっしゃいました。なぜです?

エ:私たちは過去10年で確かに間違ったこともしてきました。これについては私の本『Gib alles nur nie auf!』でも詳しく述べています。私たちはいくつかの点においてやり過ぎました。ゲームプラン、ゲーム理念、データ、事実、スタッツに重点が置かれすぎていました。おまけにテクノロジー、ゲーム理解、認知能力などの基本は、やや置き去りにされていました。アスレティック分野でも時々やりすぎたと思っています。飛びぬけた才能ある選手にとってあまりに簡単すぎたり、選手の努力や態度、意欲ではなく、才能や能力の方を褒めすぎました。そのうえ、育成センターの認定においても三ツ星を狂ったように追求して、画一化とステレオタイプ化の結果をもたらしました。

S:再び強い年代別を生み出すには何を変えなければいけないでしょうか?

エ:私たち全員とDFBの共通認識は、個性、創造性、直観力を許容するだけでなく、さらに強く要求していかなければいけないということです。選手はミスをすることを恐れてはいけないし、あえてドリブルをすることや、時におかしなことをすることを許されなければなりません。

S:あなたは最終的にはブンデスリーガの監督として、ピッチサイドに立つのでしょうか?

エ:ブンデスリーガの監督になることは私の目標ではありません。そうだったなら私はずっと前になっているでしょう。その機会は何度もありました。シャルケだけではなく他の場所でも。完全に否定はしませんが、まず起こりえないでしょう。