50+1ルールの改定がもたらす意味

先週、気になるニュースがぽろぽろと報道されていて、記事内容が難解なためなかなかまとめられなかったのですが、今の時点で理解していることを自分メモ用に書いてみます。

わからない点を理解するためにSchalkefan.deのマティアスやTwitterでフォローしている方にいろいろ教えていただいたりしました。ありがとうございます。
下記、法律的な文言に詳しくないことから、間違った用法で説明しているところもあるかと思いますが、ご容赦ください。

ブンデスリーガはプレミアリーグの様にクラブのオーナーシップを投資家が独占するということはできないようになっています。クラブに対する投資には49%というシーリングがあり、51%は親会社であるクラブの事業体が保有しなければなりません。これは50+1ルール(”50+1 Regel”)というドイツ・フットボール・リーグ(DFL)規約で規定されています。
過半数を超えないということは、投資家の一存で人事権や経営権を左右することができないということであり、ブンデスリーガでは例えばアブラモヴィッチやグレイザーのような人は規約上、現れにくくなっています。

Wikipediaの『50+1 Regel』の項目を見ると、各チームのオーナーシップが表になっています。多くのクラブがその成立上の背景からクラブの事業体が100%株式を持っていることがわかりますが、よく見るといくつかのクラブの横に企業名があることに気がつきます。

最初のDerWestenの記事には”LEX Leverkusen”、あるいは”LEX Wolfsuburg”という言葉が出てきます。
レバークーゼンにおける製薬会社のバイエル、ヴォルフスブルクにおけるフォルクスワーゲン社のように、歴史的に企業と深い関係をもっているこの二つのクラブにおいては、オーナーシップは50+1の範疇ではないということが規約の中で暗示されており、これはしばしば”LEX Leverkusen und Wolfsuburg”と呼ばれます。(LEXは法という意味のラテン語)
つまり、レバークーゼンは企業であるバイエル社がそのシェアを100%保有し、ヴォルフスブルクはフォルクスワーゲン社が100%保有しているのです。
この二つのクラブにおいては50+1という過半数ルールは適用されていません。
規則には特例として『1999年1月1日以前から少なくとも20年以上にわたりクラブに実質的に継続して貢献』してきた場合はこの範疇にあらずとなっており、まさにこの二つのクラブを暗示しております。

2009年頃より、ハノーファーの会長キントはこの50+1ルールの見直しを求めてDFB/DFLと争ってきました。
DFLの会議では何度も却下された後、キントは裁判に持ち込んで戦い、このたびようやく裁判所が50+1ルールの変更を求め、DFLがそれに従ったのです。

ただし、50+1ルールの原則はそのまま変わりません。この先も投資家がいきなりクラブの過半数の株式を取得することはできません。
このたび変更されたのは『1999年1月1日以前』。この日付による限定項目が削除されたのです。
つまり今後、『20年以上、クラブに実質的に継続して貢献してきた』企業あるいは個人であれば、将来的に50+1ルールを超えてクラブ株式を100%所有することも可能であると解釈できるようになったのです。
非常に限定的ではありますが、投資家に対して門戸が開かれたともいえます。

今回の決定がキントにどのような利益をもたらしたのか。Die Zeitのインタビューがその意味を明らかにしています。

 

ZEIT ONLINE: Sie müssen also noch sechs Jahre warten, bis Sie als Sponsor zum Beispiel offiziell entscheiden können, welche Personen im Verein welche Positionen besetzen?

Kind: Nach 20 Jahren hat der Hauptaktionär die volle Entscheidungskompetenz, personell und wirtschaftlich.

1997年より、キントは裕福な投資家としてハノーファー96をサポートしています。
つまり6年後の2017年が来れば、20年間継続してひとつのクラブを支援してきたことにより、彼がハノーファーの人事権・経営権を支配することが可能になるとも言えるのです。

同じようなことがホッフェンハイムのホップにも言えます。すでに49%のシェアを取得しているホップは2000年頃からクラブを支援しており、2020年には投資家として同じような権利を得ることが可能になるのかもしれません。

先の長い話ですが、今回の50+1ルールの改定は将来に向かって深い意味をもたらす可能性があり、看過できないのではないかという気がします。
以上、個人的にずっと興味のあったことなので私なりにまとめてみました・・・。

50+1ルールの改定がもたらす意味」への2件のフィードバック

  1. 興味深く読ませていただきました。バイヤーとかフォルクスワーゲンのような大企業だと(上場企業?)個人の意志による人事、経営という感じではなくなるようにも思いますが。ハノーファーとかホッフェンハイムの会長は個人の大富豪としてクラブを支えているということなんですよね。こちらの方が個人の意志による経営という感じになりそうですね。余談ですが、イングランド場合には外国資本が大挙して入る前から、クラブによって所有・経営形態がまちまちだったように思います。チェルシーのベイツ会長とか名前は失念しましたが、ヴィラとかボロとかはオーナー会長の色が強かったかと。以前のリヴァプールとかアーセナルなんかはそう言ったオーナー会長みたいな方は存在しなかったと認識しております。

  2. >A.F.さん、
    VWは取締役会に人を送り込んでいて、その人のインタビューなどを見るとけっこう口出しそうな感じもありました。
    まあ、個人がオーナーになると、イングランドなどを見てもけっこう恣意的に経営に口出しそうな気がしますよね。

    >イングランド場合
    あ、ですね。リーズとかもそんな感じですよね。
    ブンデスは資料がとにかくドイツ語なので、どうも事情がまだわかりにくいところがあって、まだまだ手探りで研究中です・・・。

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