サッカースカウティングレポートを読む

小野剛の『サッカースカウティングレポート』を本屋で見かけて気になり、どうしようかなと思っていたのですが、Amazonのレビュースコアも非常に高いので読んでみました。
いやーもう、ひさびさに良質のサッカー本に巡り合ったという感じです!

 


 
小野さんは元サンフレッチェ広島の監督としてのキャリアが一番有名かと思いますが、その前は代表チームのスカウティングをつとめられ、アトランタ五輪最終予選の頃から、ワールドカップ・フランス大会へと陰で日本代表を支えてきました。
個人的には、小野さんがヘッドコーチをなさっていた2002年トゥーロン国際大会のチームがすごく好きで、あのときは松井、山瀬、中山悟志などで、とても魅力的なサッカーをしていたことを覚えています。

『サッカースカウティングレポート』は、それほど分厚いわけでもなく、一見するとすぐ読めそうなのですが、とにかく中身の濃い本で、じっくり読みはじめるとすごく時間がかかってしまいます。でもそのぶん、ほんとに面白い。

プロのスカウティング・スペシャリストはいったい何に気をつけて試合を見ているのか。
特に第2章の『スカウティング術のノウハウ』は、試合でおさえておくためのポイントを具体的に挙げ、例えばシステムひとつをとっても、そのフォーメーションのどこに注意して見るのか、こういう場合にはどういう意図がかくされているのか、実際のゲームの例や図を使って、詳しく説明しています。
ほんとに目を見開かされるというか、プロってすごい!とうなることばかり。

さらにスカウティングで得た情報を、どのように選手に伝えていくのか、何分のビデオにすれば一番、選手が集中して見ることができるのかなど、なにもかもが具体的。試合でのメモの取り方や、試行錯誤をくりかえした末、ようやく落ち着いたメモ用紙のスタイルなども興味深いです。
そして、アトランタ五輪・対ブラジル戦でのゴールは、偶然ではなかったのだなというのがあらためてわかります。

この本を読んだ後は、サッカーの試合を見る目がきっと変わると思います。

また、後の章ではフランス大会に向けて、アジア最終予選を戦っていた時の監督・スタッフの裏話も書かれており、あの当時の最終予選でのぴりぴりとした空気や、初めてのワールドカップで世界との差を思い知らされたことなどを思い出して、読みながら何度も涙が出そうになりました。

小野さんがこの本を書かれた背景には、スカウティングという言葉がひとり歩きして、サッカーの指導にあたる人たちがその目的を取り違えていることへの懸念もあるようです。

『スカウティングによって、(指導者の側が)サッカーを観る目を養い、選手たちを信じ、素晴らしい個性、素晴らしい能力を見抜いてあげる』ことが、日本のサッカー全体のレベルアップにつながり、さらには社会をも変えていく力になるかもしれない。

サッカーの持つ力を信じて、情熱を傾ける人の言葉は胸を打ちます。機会があったらぜひ読んでみてください。

 

サッカースカウティングレポートを読む」への2件のフィードバック

  1. これ気になって探したけど岡山じゃどこにも売ってなかったです…。
    amazonも2週間待ちですし。あー、読みてー。

  2. >Genkiくん、
    週末、無事に手に入るといいですね!
    きっと楽しめると思うよー。

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