Archive for 6月 12th, 2017

06 12 2017

シャルケはどこへ向かっているか



金曜日、来シーズンも継続すると見られていたヴァインツィールがシャルケを解任され、ドイツ2部エルツゲビルゲ・アウエの監督であるドメニコ・テデスコが後任になることが発表されました。メディアの解任報道があって1日足らずの出来事でした。ハイデルはマインツでも、アンデルセン解任からトゥヘル内部昇格へ動いた時のように、決断してからの動きは驚くほど早いです。

継続から解任への変更には、コノプリャンカのヴァインツィール批判の影響があったのではないかと思われます。代表に合流したコノプリャンカは、ヴァインツィールのコミュニケーション方法を批判し、彼は臆病者だと発言。またヴァインツィールよりも自分の方がチームに長く残るだろうともコメントし、図らずもそれは現実となってしまいました。同じ頃、マイヤーがシャルケの契約延長を拒否したという報道も流れました。ヴァインツィールの求心力がすでに失われていると、ハイデルが判断したとしても不思議ではありません。

アウエの会長が公式サイトでテデスコ移籍の状況を説明していますが、先週半ばには代理人より、ブンデスリーガのクラブが興味を示していると聞かされていたようです。直後の金曜日午後には、シャルケから正式なオファーが届きました。テデスコのような優秀な人材なら、監督候補として事前にリストアップはされていたはずですが、実際に解任・正式オファーに動いたのは、まさにこの数日の出来事だったことが見てとれます。

私はシャルケの他に、アウエとパダボーンを追いかけているため、テデスコについてはアウエの監督就任時点から興味をもって試合を見てきました。また公式サイトのインタビューや試合前後の記者会見などを通して、その人となりを知る機会もありました。これまで自分が得た情報を元に考えると、テデスコを監督に任命したシャルケの「方向性」は間違ってはいないと思います。

テデスコの率いたアウエでの戦績を簡単に振り返ってみます。アウエは、22節のディナモ・ドレスデンとのダービーに、ホームで1-4と大敗し、ドチェフ監督が辞任。続く23節はアシスタントコーチが指揮を執り、24節よりテデスコが監督に就任しています。その時点でアウエは最下位。脱降格圏の15位とは勝ち点にして5もの差がありました。得失点差は-19。失点は40とリーグワーストでした。

ドチェフ前監督は4バック2ボランチ、トップにケプケを置く4-2-3-1で、戦術的に目新しいところはなく、端的にいってこれ以上の成長は望めませんでした。テデスコは初戦から3バックに変え、3-4-3/5-4-1をベースにチームを立て直しにかかります。21歳のサムソンをボランチからセンターバックにコンバート。また控えだった24歳のカリクも起用され、ディフェンスラインの右でレギュラーの座を勝ち取りました。若手ばかりではなく、35歳のティファートは中盤の要として、ビルドアップにも貢献するようになります。ヴュルツブルク戦での3点目のように、最終ラインのブライトクロイツからティファートを経由し、ケプケが決めた得点は、見事にはまったコンビネーションでした。

1試合平均1.8失点だった守備は、テデスコ就任以降は11試合で10失点(1試合平均1.1)とやや向上。クリーンシートも5試合あります。何よりも短期間で戦術的な決め事をチームに浸透させた早さは注目に値します。上位との対戦ではウニオン・ベルリンに敵地で1-0と勝利し、ハノーファーとの試合は1-2から最後に追いつきました。シュトゥットガルト戦は、攻め上がる局面はあったものの、テロッデの得点能力の前に3-0と完敗。両チームの選手の質を比較すると、止むを得ない結果だとも言えます。最終的に11試合で6勝3敗2分と勝ち点20を積み上げ、14位でシーズンを終えることができたのです。

イタリア・ロッサーノ生まれ、31歳の彼は、2歳の時に家族と共にドイツのバーデン=ヴュルデンベルク州に移り住んでいます。サッカー指導者としてのキャリアをシュトゥットガルトの下部組織で始め、2015年にホッフェンハイムのユースチームに移りました。「フットボリスタ」2015年12月号で、ホッフェンハイムのイノベーションチーム責任者が、「自分たちで”指導者のタレント”を見つけて哲学・やり方を植え付けていくというコンセプトを作り上げた」と語っていますが、当時U19を率いていたナーゲルスマンと同様に、テデスコにもホッフェンハイム流の指導方法は身に付いています。

プロチームを率いてたった11試合で、シャルケの次期監督の座を得たテデスコ。根底には、モダンな戦術をベースにしたチームへ変貌しなければ、リーグの趨勢から取り残されてしまうという、シャルケの危機感が見えます。シャルケで遅れているのは戦術だけではありません。例えばドルトムントやホッフェンハイムで導入されているフットボーナウト。あるいは脳の実行機能の開発に使用されているアプリケーション。練習の負荷を記録し適切な修正を行うプログラム。シャルケからはこういうテクノロジーに関する話は、これまでほとんど聞こえてきませんでした。おそらくこの領域ではかなり立ち遅れているのが、現在の順位にも影響しているのではないでしょうか。しかし、テデスコ就任が決まった直後のテニエス会長インタビューには、興味深い要素も含まれています。建設中のトレーニングセンターは、プロ選手用に計画の変更が加えられ、この1年でスカウティングシステムが革新的に向上したことにも言及しています。テデスコの任命には戦術と同時に、テクノロジーを駆使した指導ノウハウも取り込みたいという思惑もあるように感じます。

さて、彼がシャルケで結果を残せるかどうかですが、これについてはもう少しチーム編成が進まないと判断がつきません。ただアウエの試合を見る限り、ポジションのコンバートも含め、選手起用はユニークで、より多くの選手にチャンスを与える監督のようです。テデスコ自身もアウエ就任時のインタビューで、「それぞれの強みを生かし、選手がどのようなサッカーをしたいか、あるいはできるかに着目し、ふさわしいポジショニングをしていく」と答えています。リーグ終盤では、FWのケプケではなく、MFのクヴェシッチを真ん中に置いたゼロトップに近い布陣などを取っていました。シャルケでの選手起用がどうなるか楽しみでもあります。

彼が来た時のアウエの状態はまさにどん底で、監督が若かろうがプロチームの経験がなかろうが、100%彼の言うことを受け入れて実行するしか道はありませんでした。そういう意味では選手の吸収は早かったはずです。シャルケの様に毎年方針が変わるチームでは、新しい監督に対する心理的なハードルは高いでしょう。いかに早く選手たちを取り込み、前を向かせるか、これまで以上に監督の手腕が問われます。


No responses yet