同年代GKのStatsが面白い

Kicker今週号の見出しはシャルケのGK問題で、その内容自体はまあ特に目新しくもないのですが、特集の中でドイツ同年代GKのStatsを比較している表がなかなか興味深いです。

比較されているのはブンデス一部のスタメンでプレーしている20歳から24歳のドイツ人GK(ノイアー除く)で、ラース・ウンナーシュタル(22)、トラップ(22)、レノ(20)、ツィーラー(23)、テア・シュテーゲン(20)、ミーリッツ(23)、バウマン(22)、ウルライヒ(24)、ギーファー(22)の9人。
名前を並べただけでドイツの若手キーパーがいかに豊富かがわかります。
ここには名前はないけど、二部も含めるとホルン(19)やジッペル(24)も入ってくるはず。

ラースのStatsはパッと見たところ悪くはないです。
クリーンシート4試合はトップ(他にバウマン、ウルライヒ、ギーファーも4試合です)、10試合で失点10は他の選手(平均16)と比較しても最少。大きなミスも0、ロングシュートによる失点も0です。ただし、Kickerの平均採点で言うとツィーラーの採点3.36 についで2番目に悪い3.30。

Kicker採点トップはケヴィン・トラップの2.05。
トラップの場合、枠内シュートのセーブ率が75%で、他の平均(67%、ラースは65.5%)に比較しても高いです。ただしラースの被枠内シュート29本に対して、トラップが64本という倍以上の数を考えると、必ずしも数字ほどの差があるとは思えません。
実際に75%をラースの被枠内シュート数29に当てはめて換算すると、トラップがラースと同じ枠内シュートを受けた場合、ラースより2本ほど多く防ぐということになります。
(ただこの被枠内シュート29ってやや少ない気がします。他のサイトで数えてみたら41はありましたので、本当に数字あっているの?と少し不安。29だと10試合で相手の枠内シュートが一試合3本に満たないということになりますよね)

トラップは採点が最高点の1である試合が3試合あり、一番悪い試合でも3です。
Kickerの傾向として被シュートをスーパーセーブした数が多ければ、そのキーパーに対する印象は強く、採点が1になる可能性は高くなります。
トラップの被シュート数64、失点16を見ても、彼のところでいかに失点を防いでいるか、逆に言うと相手チームがいかにディフェンスラインを破ってシュートまで持ち込んでいるかも示していますね。
若手のリストからははずれていますが、アドラーも今季1に採点された試合が3試合あり、序盤のぐだぐだだったHSVの守備を考えると、キーパーが評価される基準がなんとなく見えてきます。

それに比較するとラースの場合、採点は3と4を繰り返しており、Kickerでの評価は必ずしも高くありません。
大きなミスがゼロであり、ロングシュートによる失点もゼロ。1試合の失点平均が1.0は数字だけを見ると素晴らしいものであり、さらに被枠内シュートが29というのは、危ういように見えてもシャルケの守備陣が優秀であることもうかがわせますが、それが必ずしもラースの評価にはつながっていないということなのでしょう。Kickerの採点だけを見ると本当に平均的な選手、可もなく不可もなく、という印象を受けます。

その他のゴールキーパーでそれぞれ突出している部分をあげると、テア・シュテーゲンはクロスを防いだ数が26本で、トラップの18本、ラースの15本に比べると比較的クロスへの対応がうまいことがわかります。
またテア・シュテーゲンは枠内シュートのキャッチング率が高く、トラップの27.1%に比べ、54.5%とセーブのうち半数以上がキャッチングによるものです。実はラースもキャッチング率は高く、73.7%となっています。

一方で、ゴールキックが味方選手にわたる確率ですが、これはミーリッツが一番高く73.7%、ラースは66.2%、バウマンに至っては30.1%。
これも数字を見ると大変面白いのですが、ラースのゴールキック68本に対して、ミーリッツは99本中73.7%もあり、実に72本のゴールキックが味方に届いているということになります。

ゴールキーパーの評価というのはなかなか難しく、私も実はまったくわかりません。
ただ、ラースについての私個人の印象はキーパーとしては平均点、足元のシュートにやや弱く、メンタルの強さは一流という感じかな。記事によると、彼のここのところの成長は著しく、将来に対する期待値もだいぶ含まれているようです。

ゴールキーパーというのは本当に孤独なポジションで、3年前に亡くなったエンケについて書かれた『A Life too short』という本を読むと、エンケが10代でデビューしたグラートバッハ時代にサポから受けた様々な罵声が、いつまでも彼の心を深く傷つけていたというくだりがあります。
若いラースに対する一部サポの風当たりは時に行き過ぎな場合がありますが、表面からではわからないゴールキーパーの苦悩にも思いをはせるべきではないかという気がしてなりません。

写真はシャルケU-19時代、足元をすべらせている間に失点を許してしまった直後のラース。(実は私のラースに対するイメージはこの時にうっかり刷り込まれてしまった。汗。このイメージを覆すさらなる成長を希望・・・)



 

同年代GKのStatsが面白い」への6件のフィードバック

  1. ご紹介どうもありがとう!
    買おうかどうしようか迷ってましたが、仕事終わったら買ってきます〜!
    この枠内に対するGKの防御率が知りたかったので。
    特に他のGKとの比較があれば。。。と、望んだ通りの、私のためのようなレポです。

    ドイツでは前から言われてるけど、GKは派手に飛んでボールを防げば点数が良くなるって。
    それが2m先であろうと1m先であろうとね。
    で、マチュシャクはどうやらそのようなタイプのGKを育てなかったようです。
    地味に有効的であればそれでいいのですが、人々がそれに気がつくのに時間がかかるようです。

    それでは、後に記事を読んでから〜!

  2. >しょーちゃん、
    うん、比較は表だけなんだけど、こういう数字の比較はすごく面白い。
    もちろんStatsだけではわからない部分もあるけど、GKの傾向とかは示しているよね。
     
    トラップやジッペル(フロムロヴィッツや、もっというとヴィーゼやヴァイデンフェラーも)はラウテルンのGKコーチ、エアマンの指導を受けていて、派手なセーブをするところが共通点。
    それに対してマチュシャクの指導をうけたキーパーは正統派というか、きちんと基礎を固めてプレーするキーパーって感じがします。
     
    日本でもそういう違いはやはりあって、かつて川口と楢崎というふたりのキーパーが代表ではライバルでしたが、この二人は対照的でしたね。動の川口と静の楢崎という二人でした。
     
    そういう私もやっぱりゴールキーパーってどう評価してよいのかよくわかりません。
    でもミスすれば叩かれるし、普通にポジショニングよくプレーしていれば、Kickerの採点はあがらないという、ほんとに因果な職業です(笑)

  3. 読みました~!
    最近、ラースに対するロビーが急に増えてきたと感じるのは私だけかしら?
    この表をみても、ラースが優れた仕事をしてるのがわかりますよね。
    逆に他のGKの弱点が見えて面白いです。
    正直、相手GKは敵としてしかみたことがないし(笑)90分を通してニュートラルな目でみることがあまりないので。。。
    トラップの点数がいいのは数多い絶体絶命時に圧倒的な働きをするからのようですね。
    それ以外にラースが劣っているとは思わない。
    不思議なのは、キャッチ率がラースのほうがずっと高いのに、太字で1位とされてるのはテア・ステーゲンだとこ。間違ってるよ、キッカーさん!
    それを入れればこの9人のGKの中でラースが1位なのは6つ。圧倒的な強さを示してます。
    な・の・に、どうして彼は評価されないのか?
    まずは、キーパーの仕事にはDFの強さに影響があるから、そして、今GKで重要に思われている11人目のフィールドプレーヤー的な働きをしないからだと思います。
    プレーが無難すぎるんだと。
    キャッチをした後のすばやいプレー、後ろからの素早いカバー。
    リスキーだけど、今のキーパーにはそれが求められると。
    で、シャルカーに特に失望されるのは以前そんなプレーに慣れていたから。
    ちょっと、かわいそうなんだけど。。。

    >ミスすれば叩かれるし、普通にポジショニングよくプレーしていれば、Kickerの採点はあがらないという、ほんとに因果な職業です(笑)
    ほんとにその通りだと思います(笑)

  4. >しょーちゃん、
    確かにラースに対するロビー活動、増えてますよね。
    今回のGK記事も、Kickerでシャルケを担当しているThiemo Müllerの記事だってところで、なるほど根回ししてるのかなあという感じがちょっとだけしました。
    ラースの数字は他のキーパーと比べても本当にすぐれている方ですよね。
     
    キャッチ率のところ、確かにテア・シュテーゲンが太字になっているのに書くときに気が付いていて、うーん、これはラースの数字がおかしいのか、太字が間違ったのかと悩んでしまいました。
     
    ドイツはキーパーが本当に優秀だけど、やはりキーパーを語るときにはDFも含めないといけないという気がします。
    一人だけで守るわけじゃないから。
    トラップのケースなんて、むしろDFは何をしているんだろういう素朴な疑問すら感じます。(もちろんトラップが優れたGKであることは疑いはないですが)
     
    このStatsからはやはりシャルケのディフェンスとキーパーの連携の良さがすごく見て取れると思うんですよねえ。
     
    ラースで個人的に不満があるとしたら、私はフィールドプレーヤー的な動きよりも、足元を抜かれることかなあ。
    背が高い分、腰の位置も高い気がして・・・。
     
    シャルケのキーパーは今は誰がやっても必ず文句を言われるところ、本当にラースはよくやっていると思います。メンタルの強さは素晴らしいですね。
    みんなで後押ししてあげないとね。

  5. >ラースの足元
    もう、絶対に狙われてますね。
    ま、でかいからか、体が硬いのか、それとも。。。

    とあるとこではラースにダイエットをさせろって意見まで出てるようなんで。。。
    数キロやせれば俊敏になるんじゃ?って。
    もう、放っておいてって言いたくなります。

    >メンタルの強さは素晴らしいですね。
    > みんなで後押ししてあげないとね。
    うんうん!それが彼の成長に一番大切だと。

  6. >しょーちゃん、
    すみません、すっかりお返事するのを忘れておりました(汗)
    もういいよねw

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