2016/17シーズンも、前半戦が終了した時点で、いつものようにブンデスリーガ好きで中間考査(チーム・プレビュー)を書きました。
17人の愛好家による独ブンデスリーガ&ツヴァイテリーガ16-17シーズンの“中間考査”・1
17人の愛好家による独ブンデスリーガ&ツヴァイテリーガ16-17シーズンの“中間考査”・2
17人の愛好家による独ブンデスリーガ&ツヴァイテリーガ16-17シーズンの“中間考査”・3
シーズンももう終わってしまいましたが、こちらにも転載いたします。今回はシャルケではなく、ドイツ2部のまとめとハイデンハイムのプレビューを担当しました。アウエ同様になかなか地味なハイデンハイムですが、とても見ごたえのあるサッカーを展開しています。(初出:2017年2月)
チーム完成度の高さで昇格を狙う (ハイデンハイム 4位 勝ち点29)
2部の中でも名前の知られているクラブもあれば、そうでないクラブもある。日本人選手がプレーしているチームはもちろんだが、1860ミュンヘンや、ボーフムなど、かつて日本人選手が所属したチームも、名前を耳にしたことがあるかもしれない。
そういう意味では1.FC ハイデンハイムはかなり地味な存在だと言える。そんなクラブが注目を浴びたのは、2013年に製作された「Trainer!」という映画だ。3人の監督の1シーズンを追いかけたドキュメンタリーで、中でもハイデンハイムのフランク・シュミット監督は強烈な印象を残す。横浜フットボール映画祭での上映が予定されているので、これでハイデンハイムが少しでも知られるようになると嬉しい。
2016-17シーズンの前半を終了し、ハイデンハイムは8勝4敗5分、勝ち点29の4位で折り返した。3位シュトゥットガルトとの差はわずか2ポイント。昇格も十分狙える好位置につけている。ただしまだ「Aワード」つまり「昇格(Aufstieg)」の話はタブーのようだ。ハイデンハイムは13-14シーズンに3部で優勝し昇格している。この時の2位はRBライプツィヒ、3位はダルムシュタットだった。両チームとも現在1部でプレーしていることを考えると、負けず嫌いなシュミット監督が昇格を考えていないわけがない。
昨シーズン、10ゴール9アシストと活躍したライペルツをシャルケに買い戻され(その後インゴルシュタットへ移籍)、得点力の低下が心配されたが、フライブルクからレンタルでティム・クラインディーンストを獲得。ドイツU20でもプレーする194センチの大型フォワードだ。
クラインディーンストは3部のコットブス時代にブレイクし、昨シーズン、2部だったフライブルクに移籍。残念ながら大きな怪我もあって、出場機会には恵まれなかった。今季レンタルでハイデンハイムに加入すると、第9節のフュルト戦での右膝内側靭帯損傷による離脱まで、3ゴール3アシストと活躍、チームを2位まで押し上げた。
第16節のウニオン・ベルリン戦で怪我から復帰し、さっそくゴールを挙げている。高さを生かしたヘディングのみならず、スピードもあり、プレーは柔軟。フライブルクやハイデンハイムのようなチームで、高い戦術理解も備えることになると、今後がますます楽しみな選手と言える。
もう1人、注目して欲しい選手はキャプテンのマルク・シュナッテラーだ。
2008年からこのチームでプレーする31歳のベテランは、前半戦17試合で7ゴール6アシストと安定した活躍ぶりを見せている。14-15シーズンに、現フライブルクのニーダーレヒナーと組んでいたコンビが非常に印象的で、2人の破壊力はリーグでもトップクラスだった。
セットプレーからのボールや、ダイレクトで素早く上げるクロスの精度は高い。試合開始時は左サイドハーフだが、かなり自由にポジションをとる。第14節ザンクト・パウリ戦で、フェルホークとのパス交換から決めたシュートは、シュナッテラーらしいゴールだった。バランス感覚とボール扱いのうまさはこちらの映像でも証明済みだ。(ヘディングでボールを回しているのがシュナッテラー)
基本的なフォーメーションは4-4-2。第11節のボーフム戦以外は、すべてドッペルゼクサー(ダブルボランチ)で、組み合わせはほぼグリーズベックとティッシュ・リフェロの2人だ。どちらもカバーリングに優れ、最終ラインに持ち込まれる前に素早くコースを限定する。
ハイデンハイムはイエローカードの少ないチームで、むやみに1対1に持ち込まず、タックルも比較的少ない。チームの守備はよくアグレッシブと表されるが、ガツガツと当たりにいくことがこの言葉の意味ではないという好例を示す。ただしDFBポカール2回戦で、マリオ・ゴメスに得点を許した時のように、フィジカルで対峙すると不利になることもある。
ディフェンスラインは、真ん中にベールマンとヴィテックが不動のスタメンをとる。冬にレンタルでインゴルシュタットから加入したヴァールが、固いスタメンの壁に対し、どこまで違いを見せられるか興味深い。
サイドバックはシュトラウスとファイクがファーストチョイスのようだ。レバークーゼンからレンタル中のベッカーや、ハイデンハイムユース育ちのシュカルケなど、楽しみな若手も多い。
ハイデンハイムでもう1つ注目して欲しいのはマスコットのパウレ。クラブの集合写真にも一緒に写る人気者だ。
ハイデンハイムのスタジアムから南へ10キロの場所に、テディベアのぬいぐるみで有名なシュタイフの生まれ故郷・ギンゲンがある。パウレもよく見ると、耳にシュタイフのボタン・イン・イヤーと黄色いタグがついている。夏のシュタイフ祭りでは、敷地内で選手たちのサイン会も開かれた。1.FC ハイデンハイムとシュタイフは、どちらもこの自治区の誇りなのだ。