平成中村座@ベルリン公演

ブンデス最終節だというのに、FAカップ決勝だというのに、ジェフ千葉が2連勝したというのに、すべてほったらかして、行ってきました平成中村座のベルリン・歌舞伎公演。

金曜日の授業のあと、Air Berlinでベルリン・テーゲル空港へ。ケルンからだと1時間くらいです。夜19時半からの開演に十分、間に合いました。

公演が行われたのは、Haus der Kulturen der Weltという場所で、ブランデンブルク門を越えて、ティーア・ガルテンという広大な公園の中にあります。
場所をちゃんと確認してなかったので、ウンター・デン・リンデンからかなり歩いてしまった気がします。たぶんベルリン中央駅から行った方が近かったかも。
あいにくの雨でしたが、着物でいらっしゃっている方もいました。在独の方かな。



『夏祭浪花鑑』は渋谷のシアターコクーンで見たことがあり、そのときはラストシーンに度肝を抜かれたのですが、ベルリンではどんな風にそのあたりの演出をするのかも楽しみでした。

席は後方の最前列で、前に通路がありました。
花道がないので、おそらく役者さんがその通路を通るだろうと読んでそこにしたのですが、どんぴしゃ。
彌十郎さんが目の前を通った時には心の中で『大和屋、きゃー、きゃー!』と言っておりました。彌十郎さん、好きなんだよう。
勘三郎さんも橋之助さんも亀蔵さんもお久しぶりー。ドイツで歌舞伎。うーむ、ぜいたくすぎる。

『夏祭』は役者がそれぞれの演技で凄みを見せる場面が多いのですが、個人的には、彌十郎さん演じる釣船の三婦が数珠を切って、悪に立ち戻るシーンなんかも好きです。

最初は同時通訳の声がそでから漏れ聞こえてくるのが気になって集中できなかったのですが、久しぶりの歌舞伎、見ているうちにどんどん楽しくなってきて、すっかり堪能しました。
ああ、でも大向こうから掛け声がかからないと、歌舞伎の一体感がちょっとだけ減りますね。私が男声なら掛けたと思うのですが、女性の声で掛けるのはちょっとだけ躊躇してしまいます。
まだ14日から開演したばかりというのもあるのか、観客の反応はちょっと固かったような気がしました。掛け声とかあるとまた違う雰囲気になると思うんだけど。

舅殺しの場はちゃんと泥場で、幕の間に前の方の人たちが不思議そうにレインコートを羽織っている姿がちょっとほほえましかったです。

ラストはごく普通に終わりました。しかも唐突に。
場所の制約があったのか、芝居の凄みで勝負したかったのかは、私にはわかりません。(記者会見では『ニューヨークはお祭りという感じだけど、こちらは“静かに燃える”感じ。どっぷり演劇をやりたい』と言っていたので、あえて芝居にしぼったのかも)
前に見たことがあるからつい大仕掛けを期待して、ラストに肩すかしをくらったような気持ちになってしまったのは、ぜいたくな要求なのかもしれないですね。そこまでに十分楽しませてもらったというのに。
勘三郎さん&串田さんコンビに対してどんどん要求するレベルが高くなってしまっている気がします。また彼らがそれに答えてくれるので、つい。



ドイツ人の知り合いが見に行く予定なので、機会があれば感想を聞いてみます。
むこうの人の反応でおもしろかったのは、徳兵衛の女房お辰が鉄灸を頬に当てるシーンで、後ろにすわっていたドイツ人の女性ふたりが大笑いしていたところです。
どこが笑いのつぼなんだろう。ドイツ人には滑稽に感じるシーンなのかしら。ぜひそのあたりも聞いてみたいですね。