2012年度のシャルケ会計報告を分析してみた

2012年度(2012年1月1日より2012年12月31日までの期間)のシャルケの会計報告が発表されました。

私の知る限りでは、シャルケの詳細な財務諸表を見たのは初めてな気がします。リンク先の一番下からアニュアル・レポートがダウンロードできます。

資料がいろいろあって面白かったのですが、とりあえずドイツ語の損益計算書を日本語に直してみました。
わかりやすいように直したので、通常の経理用語ではないところもあります。

左側が2012年の数字、右が昨年度の数字です。B/W(Better/Worse)欄のプラスとマイナスは、単純にプラスが良くなった、マイナスが悪くなったと考えてください。
画像はクリックすると拡大します。また、この記事の下の方に読み進んで行くと各項目が大きく表示されています。
単位はすべて百万ユーロです。190.4とあったら、190.4ミリオンユーロ(1億9千万ユーロ)です。

 
薄い青は売上と結果を表す小計です。濃い青が使った経費です。
太字の部分は各項目の小計で、たとえば売上高の欄が太字で190.8と表示されていますが、その下に少し小さな文字で表示されている『スポーツ事業』から『その他の収入』までがこの内訳になります。小数点以下を切り捨てているので、すべて足しても合計と少し差が出る場合もあります。
グループ全体の連結ベースでの報告になりますので、ケータリング事業なども含まれています。

WASにも今回の数字に関する記事が出ていましたが、昨年の売上224.2Mに比べると33.4M減少しています。
大きな要因として赤で丸をした移籍違約金収入があげられます。2011年はご存じのとおり、ノイアー移籍の違約金がありましたので、その分、2012年度は減少しています


次に経費の欄を見てみます。
賃金・給与が2011年に比べると1.8M減少しています。出費が少なくなったというのはクラブにとって良いことなので、差額欄はプラスで表示しています。

5の減価償却費というのは会計の概念ですが、たとえば選手を3,000万円で購入したとします。契約は3年です。その場合、支払った3,000万円を選手と契約したその年に全額経費にするのではなく、契約年数で割った分だけその年の経費にします。
つまり1,000万円が1年目。2年目にも1,000万円、3年目も1,000万円が経費となるのです。
仮にその年の売上が2,000万円だったとします。全額1年目に経費にすると2,000万-3,000万で1,000万の損失となりますが、減価償却という概念を用いると、2,000万-1,000万で1,000万の利益になります。(ものすごく単純化して説明しています)



上記の図で選手資産の経費が2012年は1.4M下がっていますが、これは選手全体の資産価値(分母)が減ったということです。おそらく、2011年はノイアーの分があったので経費が大きかったのと、2012年はラウールの半年分がなくなったために経費が減ったということが考えられます。

選手という資産以外に、フェルティンスアレナも減価償却の対象になります。
WAZの記事の中で、ピータースはスタジアムを従来の40年ではなく30年で計算するというようなことを言っていますので、スタジアムの減価償却費が増えた部分は、その他資産のマイナスで表示されている部分という可能性もあります。
(40で割るより30で割った方が、1回あたりの金額が大きくなる=経費が大きくなるということです)

その下の欄はあまり特筆すべきことはないのですが、7と8の支払利息が大幅に減少しているのは良いことだと思います。
借入金を返済して残高が減れば、それだけ支払う利息も減っていくはずです。
ただ2012年にサポーター債権(ボンド)を発行しているので、その分の支払利息は増えているはずです。(このあたりはもうちょっと詳細を調べてみないとよくわかりません)

10の特別損失というのはアレナの屋根を修繕したものです。2011年に発生していますが、これも3年でほぼ均等に割っていますので、2011年、2012年、そして来年度にほぼ同じくらいの額の特別損失を計上します。



ドイツのNRW州は調べたところ29.8%が実効税率のようでした。日本が40%を超えていることを考えるとドイツの法人税、安い・・・。(財務省のサイトに各国の法人の実効税率対比表がありますので、ご参考までに)
(ちょっと追記。財務省のサイトによると、日本の法人所得税の実効税率は平成23年の税制改革以降、40%超から段階を経て35%程度にはさがるようです)

最終的な数字は15の行になりますが、注目すべきなのは9の経常利益部分。
2011年が17.1Mの黒字に比べ、2012年はマイナス1.8M。
差額で見ると18.9Mの減少ですが、実はこれかなり良い数字だと思います。というのも、昨年より売上で33Mも減っているのですから、経費を少なくして33Mから18Mまで差額を減らしたというのは優秀です。

なので、シャルケは2012年度は赤字で大変・・・とあまり心配しすぎなくても大丈夫。
2013年ももちろんそれほどお金を使えないことは確かですが(汗)、スタジアムの借金の返済も順調に進んでいるし(ピータースによると2018年までには完済したいとのこと)、CLへの出場権を得ることさえ死守できればなんとかなりそう。

個人的には違約金で売上が新記録!とかは勘弁してほしい方なので、2012年度のような収益構造はけっこう悪くないと思う・・・。