シャルケのデジタルメディア戦略

スポナビなどでドイツサッカーについての記事を寄稿しているダヴィド・ニーンハウスが、シャルケのデジタルメディア戦略について、マーケティング・ディレクターのトーマス・シュピーゲルに行ったインタビュー記事をWebにアップしてくれています。
昨年Twitterでも少し書いたのですが、興味深い内容なので加筆してBlogにもまとめてみます。

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開閉式の屋根や可動式の芝など、Veltins Arenaはヨーロッパの中でも設備の整ったスタジアムのひとつだ。アメリカやイギリスのスタジアムのように、2014年中に無料の無線Wi-Fiを設置することを考えている。おそらく億単位(円)のレベルの投資になるだろうが、現時点ではプロジェクトを内部で進めるか、他の企業とのパートナーシップでするか双方の可能性を検討している。

私たちはいつもスポーツにおける『2番目のスクリーン』というテーマを考えている。家にいるのと同じようにスタジアムでもネットを使う、これはファンにとっても大きなメリットがあるし、あらゆる点でプラスの効果があることを期待している。

ソーシャルメディアについても大きな意味があると考えている。2011年3月、私たちはパラダイムシフトを起こした。それまでは残念なことに全く気づいてなかったが、これ以降は大きな変化があった。Webやスタジアムマガジンといった他のメディアにも変更が加えられた。
『Schalker Kreisel』はブンデスリーガで標準となり、他のクラブもこれにならっている。また日常的なニュースの更新ではなく、バックグラウンド的なもの、美しい写真やストーリーを取り入れて付加価値を付けるようにした。

(オンラインでのスタジアムマガジンという点では)2009年から2011年までSchalker Kreisel にQRコードを使ってみたが、これに対する反応は一見してわかる程度のものだった。私たちはもっと現代的な手法をとることにした。その方が使用度を測ることができたからだ。
それがソーシャルメディアのプラットフォームを構築することだった。例えば、いろいろ分析した結果、Instagramを採用し、Pinterestは見送ることにした。この面ではドイツでは先行しているFCケルンから11月にトビアス・シュミットに来てもらい試行錯誤中だ。
私たちは革新的でありたいし、意味のあるものを提供したいが、もちろんクラブの哲学と戦略に沿った形で行わなければならない。

公式サイトを刷新するにあたり、イングランドのクラブのWebサイトをくまなく調べ、ベンチマークを測定した。技術革新という点ではそれほどの違いを見いだせなかったし、最終的にプレミアリーグではこの点はあまりサポートされていないことがわかった。
しかし私たちには真似できないほどの大きな影響力を持っている。彼らのサイトのアクセス数は時々は常軌を逸しているが、その理由はおそらくコミュニケーション戦略の違いであり、クラブからメディアへ出すものには制限をもうけ、自分たちのチャンネルで独占的にニュースを扱いたがるからだろう。

パラダイムシフト後、シャルケのメディア部門で起こった変化としては、コミュニケーション管理が重要になったことだ。チャンネルの頻度が上がれば、対処することも増える。コントロールだけでなく、双方向の交流やファシリテーターの役割も必要になってくる。これについては、FCケルンでトビアスがすでに経験を積んできた。

スタジアムでのビデオキューブ(スクリーン)は実際には昔ながらの広告やスタジアムテレビ用に設計されているので、私がWi-Fiについて話すときはスマートフォンのようなデバイスのプラットフォームとしてまず考えている。

私たちはTwitter Wallというものもスタジアムにおけるソーシャルメディアとして示している。LEDボード使ったソーシャルネットワークからのメッセージを広げる方法だ。もちろん内容はスマートで賢く、面白いもの、または興味をひくものでなければいならない。
アルント・ツァイクラーのラジオ番組や、Sportschau-ClubがTwitterとうまく連携した良い例だ。

ソーシャルメディアは金が稼げるかという点については、クラブとしていつも収益になるようなプロジェクトを考えている。ドイツでは、スペインやイタリアやイングランドのような課金のコンテンツ・モデルを実装するのはかなり難しい。
よそでは多くの広告がこの国よりも受けいれられている。もちろん、それは妥当なレベルでうまく埋め込まれていなければならないし、負荷が高かったり、不快であってもいけない。そこは私たちも慎重に探っている。

デジタル化については、個人的にはこういう発展を良いと思うべきなのかどうかで迷っている。
仕事で必要に迫られて、試合中にiPhoneをのぞくことがあるが、同時に『おい、ここに本当にサッカーを見に来ているのか?』と思ったりもする。

こういう発展により、最新のスタジアムでは雰囲気が損なわれるという可能性は排除できない。
(イングランドでは試合の間にスマホで映像が呼び出せるというのも可能だが)、スローモーション映像やリプレイは審判の決定に関する議論が激しくなるし、スタジアムの雰囲気にも大きな影響があるので、確実にDFLのためにもならないだろう。

Wi-Fiが整備されれば、当然クラブとしてどういうことができるか考える。『Call-a-bear』(その場でビールの注文)というアイデアも確かに面白い。
私たちはやってみたいアイデアをたくさん持っている。それが実用的で利益を生むものなら実行するだろう。メリットのあるものならコミュニケーションの手段として行われているだろうし、必要なければ消えるはずだ。

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シュピーゲルは、シャルケのプレスカンファレンスなどを見たことがある人なら必ず見覚えのある、向かって左隣に座っている眼鏡をかけた人です。

2009年にあったパラダイムシフトというのは、マガトがシャルケにやってきてから行った改革のことかなと思います。ソーシャルメディア戦略にも着手し、またスタジアムでは『aufSchake』と、会員誌である『Schalker Kreisel』があったのですが、最終的には『Schalker Kreisel』という厚みのある会員誌に統一されました。
一時的にオンラインで過去のKreiselも見られる時期があったのですが、当時は確かにあまり需要がなかったのかと思います。今やればものすごいアクセス数だと思うけど・・・。

Facebook、Twitter、Google+、Instagram、YouTubeと、シャルケは2年くらい前からは想像もつかないくらいソーシャルメディアに関しては改善されてきたと思います。ただイングランドに比べて絶対数で負けてしまうのは、やはりドイツ語という壁もあるのかなという気がします。ドイツ語Twitterでもドイツ語・英語併記で書いたりしていますが、そうすると文字数での情報量が減ってしまうのは少し残念な感じかな。

Twitterではドイツやイングランドのクラブをいくつかフォローしていますが、個人的に好きなのはサウサンプトンFCの英語アカウントです。
試合の実況も的確ですし、Twitter以外では監督のプレスカンファレンスをYouTubeでライブで流してくれるところも非常に気に入っています。

それにしてもアレーナでWi-Fiが使えるようになる日が楽しみ。次に行くときは設置されているといいなあ。