シャルケのコレオの意味とHSV Plusという選択

ようやくウインターブレイクが開けて、ブンデスリーガ後半戦が始まりました。
シャルケはHSVとの対戦。フンテラールが長い怪我から復帰してゴールをし3-0で勝利。試合に勝ったこともだけど、久々に良い内容だったことも嬉しいです。

ところでこの試合、シャルケ側のゲストブロックにはコレオが出されました。

コレオの文章にはチケットをめぐる『Faire Karten Preise』(公正なチケット価格)というのもありましたが、今回はそれよりも、『e.V. für immer』(e.V. フォーエバー)というのが気になったのでちょっと書いてみます。

e.V.というのはEingetragener Vereinの略で、日本語にそのまま訳すと『登録協会』ということになります。法人格を持つ協会(クラブ組織)で、ドイツの簡易裁判所において法人登録をします。またe.V.には社会に対する公益性が求められます。シャルケは正式にはFC Gelsenkirchen-Schalke 04 e.V.と言います。

ちょうど1週間ほど前、シャルケの公式サイトに下記の文がアップされました。

シャルケが現在のe.V.という組織から、KGaA(株式合資会社)へと替わるという話は次回の年次総会で議題にはせず、またCFOのピータースが『シャルケは民主主義ではない』と発言した事実も一切ないということが、この『KGaAをめぐる作り話』というタイトルの元に書かれています。

これに対し、サポが本当にそうなんだなと、さらに念押ししたのが今回のコレオです。
コレオの真ん中あたりをよく見ると『GmbH(有限会社)』『AG(株式会社)』などといった言葉がちりばめられているのがわかります。それに対してサポは、『e.V. für immer』というプラカードを掲げている図になっています。
シャルケのサポとして、将来のいついかなるときもずっと『e.V.』であり続け、例えばトップチームだけ別法人として利益追求を主体とする株式組織にするという選択は、シャルケというクラブの特別性を根底から覆すもので断じて反対であるという強烈な主張だと思います。

一方で、このコレオがHSVの試合前に出されたというのは実に興味深いことでもあります。

HSVもちょうど1週間前、シャルケとは別の歴史的な選択をしました。それはe.V.である現在の組織から、トップチームだけをスピンオフし、営利団体として法人化するという提案に対し、なんと79.4%のクラブ会員がYesの票を投じたのです。
HSV Plusという名前のこの改革は、再度6月に開かれる臨時年次総会で本採決されれば、トップチームのみが営利団体として株式を発行します。HSVがオープンマーケットに行くのかどうかはわかりませんが、将来的にはどこかの株式市場でHSVの株式が購入できる日が来るのかもしれません。

もちろん1887年からの長い伝統がそこなわれることを危惧する声もありますが、80%近いクラブ会員が移行に賛成しているというのは、ずっと低迷し続けているHSVの現状をなんとか変えなければいけないという危機感があるのだと思います。

HSVの選択。
シャルケの選択。

今後HSVがどのように変わっていくのか(あるいは変わらないのか)は個人的にも大変興味があります。

このあたりのクラブ組織の形態はなかなかわかりにくいのですが、ちょうどフットボールチャンネルに出ていた谷塚さんの記事とインタビューが理解の助けになるかと思います。

 

 

上記の文章はJリーグの例を取っていますので、株式会社が多いJリーグが非営利法人部分を持とうとする場合と、今回のように非営利法人であるe.V.から『株式会社』への移行を探るドイツとでは真逆のアプローチとなります。
育成などの非営利部門と、プロチームの営利部門のハイブリット型はドイツでは珍しいものではなく、『50+1-Regel』のWikipediaページを見ると、多くのプロチームがAGやGmbHといった法人格であり、その株主としてe.V.が存在しているのがわかります。

HSVのように伝統のあるクラブがトップチームのスピンオフを選択する中、シャルケはどこまでシャルケでいられるのかとても気になります。