J.G. バラード、死去

うー、朝イチでこのニュースを知り、落ち込んでいます。
バラードはすごく好きな作家なので・・・。

ちょうど2007年に出たバラードの自伝『Miracles of Life』を読んでいたところでした。
最終章で自分が末期がんであることを告白しています。
そして、2007年初めにこの自伝を書くことを担当医であるジョナサンに相談し、サポートを受けたことに感謝する言葉が述べられています。

Jonathan is highly intelligent, thoughtful and always gentle, and as that rare ability to see the ongoing course of medical treatment from the point of view of the patient. I am very grateful that my last days will be spent under the care of this strong-minded, wise and kindly physician.

 

もう長くはないのだろうなとわかっていたのですが、やはり訃報を聞くと悲しい。
自伝の最終章から、バラードは最後の日々は穏やかに過ごせたのではないかと想像できるところが救いです。

『Miracles of Life』は英語でもかなり読みやすいです。

私は『太陽の帝国』も好きなので、実際の収容所生活で彼が感じていた幸福感と『太陽の帝国』の主人公とのギャップ(フィクション部分)などは非常に興味深かったです。

バラード自身はこの収容所での日々について、『Despite the food shortages in the last year, the bitterly cold winters(we lived in unheated concrete buildings) and the uncertainties of the future, I was happier in the camp than I was until my marriage and children』(概訳:最後の年の食料難と身を切るような寒い冬と不確かな未来にもかかわらず、その後の結婚して子供を持つ前までの時代よりもずっと幸せだった)と書いています。通常とは異なる極限生活に、幸福感を感じる人たちというアイデアはここからきているのかしら、など考えたりもしました。
日本語版、出ますかねえ。自伝の出版は難しいかなあ。

このあとは、『楽園への疾走』文庫版に書かれていたように、『Millennium People』(2003年刊)の翻訳が出そうですね。
私は『ヴァーミリオン・サンズ』、『結晶世界』『太陽の帝国』『コンクリート・アイランド』、そして意外と『コカイン・ナイト』『スーパー・カンヌ』も好きでした。
なので、『Millennium People』の翻訳刊行も楽しみにしています。

R.I.P.バラード・・・。

 

J.G. バラード、死去」への2件のフィードバック

  1. すごーく昔に『コカイン・ナイト』を読んだ記憶があるのですが、
    当時はよく理解できなかった気がします。また講義してくださいwww

  2. うおー、意外。
    genkiくんは好きだと思ってましたー。

    >よく理解
    私もたぶん彼の作品はほとんど理解できてないような気がしますw
    私は初期の破滅的で美しい世界のイメージにやられてしまいました。ヴァーミリオン・サンズだとか、結晶世界だとかの視覚イメージがときおりふっと目の前をよぎったりすることがあります。
    講義なんつーのはできませんが、いつでもお聞きくださいませ。

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