デロイト・フットボールマネーリーグ 2016

デロイト社のフットボールマネーリーグ2016が出ました。対象は2014/15シーズン。シャルケに関してのみですが、久しぶりにちょっとまとめてみました。オリジナルはリンク先からPDFファイルがダウンロードできます。

“Deloitte Football Money League 2016”

過年度のレポートについても当ブログで書いてますので、興味のある方はこちらをご参照ください。

『Football Money League 2013』
『Football Money League 2012』
『Football Money League 2011』
『Football Money League 2010』
『Football Money League 2009』

レポートの見方について。

デロイト社が独自の方法で集計し、毎年1月頃に発表するフットボールマネーリーグ・レポートは、Revenue(収入)に応じて順位をつけるという方法がとられています。支出も含めた営業利益において数字を測るわけではないので、単純に収入の大きいほど順位は上がるということになります。
計算の期間は前期シーズン。レポートが2016となっていたら、2014/15シーズン(2014/7/1-2015/6/30)を対象としています。
クラブによってはカレンダー年(1月-12月)を会計年度としているところも多いので、その場合は2年分の財務レポートから、マネーリーグの計算期間に合わせて数字を構築しなおします。パリサンジェルマンのように、多大な収入増がレポートの発表に間に合わない場合、さらっと翌年のレポートの前年順位が修正されていたりするので、現在出ているレポートが最終の数字とは限りません。

RevenueはそれぞれMatchday(入場料収入)、 Broadcasting(放映料収入)、Commercial(商業収入)の3本立てです。スポンサーやユニフォーム・サプライヤーとの契約は Commercialに含まれています。
また、Revenueに選手の移籍金は含まれていません。さらに、よりサッカービジネスにフォーカスして意味のある比較にする為に、サッカーに関係のない投資活動や資本的取引などは加味されていないそうです。

各クラブの金額は最終的に6月末の為替レートでユーロに換算(Translation)されます。そのため、イングランドのクラブなどは対ユーロ為替レートにより、結果が有利になったり不利になったりすることがあります。

2016レポートによるシャルケの収入構造は下記の通りです。パーセントは全体の比率。かっこ内は前年の数字と増減金額。通貨はユーロです。

* Matchday 17.8% : 39.2M (41.1M – 1.9M)
* Broadcasting 33% : 72.6M (68.5M + 4.1M)
* Commercial 49.1% : 107.9M (104.3M + 3.6M)

入場料収入(Matchday)は前年に比べて1.9Mユーロ減少。ホームゲーム2試合分に相当します。チャンピオンズリーグの予選1試合分とポカール三回戦の1試合だと思います。
入場料収入をさらに増加させる要素としては(1)チケット単価の増加(2)席数の増加(3)試合数の増加の3パターンしかありません。ただしシャルケは(1)と(2)がこれ以上難しいため、リーグ戦以外のチームの成績(CL、ポカール)が入場料収入の増減に直結しているのが近年の現状です。

放映料収入(Broadcasting)は、前年同様CLのベスト16まで残ったことで、UEFAからの分配が28.9Mユーロあります。金額の上昇は分配金額自体の増加によります。

商業収入(Commercial)に関しては前年の104.3Mから3.6M増にとどまりました。メインスポンサーであるガスプロムとは2017年までの契約を結んでおり、年に換算すると約20Mの収益です。来季以降への不安材料としては、フォルクスワーゲンが不祥事でスポンサー縮小する場合の影響をどのくらい受けるかという点でしょう。
マネーリーグ11位となったドルトムントの商業収入144.3Mと比較しても、かなり水をあけられた感があり、バイエルンやドルトムントのように、戦略的パートナーシップをいかに拡大していくかは今後のカギとなります。アディダスではなく、他のサプライヤーの可能性を検討しているのもその一環といえるでしょう。

今年のデロイトのレポートにはCAGR(年平均成長率)も掲載されましたが、マネーリーグの1位から5位の年平均成長率が9%に対し、シャルケのこの5年間の成長率も9.75%です。同程度の率で成長している限り、上位に追いつくことはまず難しいでしょう。またレポートにもありますが、トップ10と11位以下の差は昨年の17.5Mユーロから一気に43.3Mユーロまで拡大しました。今後はますます上位との差は広がって行く事が予想されます。

ドイツ全体で言うと、現在二部で首位を走っているラーゼンバルシュポルト(RB)ライプツィヒのような存在もあり、今後のドイツ・マネーマップが大幅に変動する可能性も秘めています。ドイツには50+1ルールという厳格なクラブオーナーシップに対する規則があり、外国資本が参入しづらいという背景もあります。しかし一方で、ドイツ全体の底上げを求めて、50+1ルールそのものの存在を見直すべきという意見も聞きます。
マネーリーグ2016を見ると、ドイツはバイエルン、ドルトムント、シャルケの3チームしか上位30位内にランキングされていないのに対し、イングランドは20位までに9チーム、20位以下には、サウサンプトン、アストン・ヴィラ、レスターシティ、サンダーランド、スウォンジーシティ、ストークシティ、クリスタルパレス、ウェストブロムウィッチと8チームが名前をつらねています。サッカーをめぐるお金の動きには、今後もますます注目して行く必要があるでしょう。